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生神の存在と使命 [都市伝説]

-序章-
「生神」とは、人として生まれ「神の力」を持つ者の事を言う・・・

しかし、生まれながらにしてその力を持っているのではない。 ある日突然、”お告げ”と言われる神からの言葉を聞くのだと言う・・・。 よくTVなどで霊媒師と呼ばれる人が降霊や除霊をしている場面を見かけることがあるが、あの霊媒師が「神の力」を持っているか否かは分からない・・・。
私は根本的に物理的に解明できない事や霊の存在などは信じない性格。 当然目に見えないものは信じていなかった・・・・。
高校2年の春までは・・・。

私の母方の祖母、久枝(仮名)は祖父、洋介(仮名)と隣町に暮らしている。 月に一度、私の顔を見に来るのか、それとも母の料理を食べに来るのか、理由はよく分からないがフラッとやってくる。 ある日曜日の朝、
私は母に起こされた。 ・・・・時計を見ると、まだ午前7時・・・。 なぜ今日に限ってこんなに早く起きなきゃいけないんだ!? と思いつつも起き上がり洗面所に向かった。 母は食事の支度をしていた。
「日曜なのに何でこんなに早く起こすんだよ!」と私は不満タラタラで母に言った!
母は私を無視して食卓に朝食を運んでいる・・・・そして、私を睨むように
「今から、ばあちゃん来るから、さっさと食べてよ!」・・・・・ 「お前に渡したいもの、あるんだってさ」・・・・
・・・・「渡したいもの?」・・・・「何を?」・・・

「知らないよ」 と突き放すように母は言い、忙しそうに部屋の掃除を始めるのだった。
-何だろう? 渡したい物って-

朝食を摂って30分程して祖母が訪れた・・・・。 祖母は背が低く痩せている。 やさしい顔立ちで、いつも笑顔だった。 しかし、私は物心着いた頃から、笑っている祖母の穏やかな顔の中に、言い知れぬ悲しさみたいなものを無意識に感じ取っていた気がする。 いつ来る時も着物姿、両手に風呂敷(食べ物や手土産を包んでいる。)
「今日は天気がいいね・・・」 と独り言のようにつぶやきながら茶の間に腰を下ろすと、母の煎れたお茶を静かに飲み始めた・・・ そして、しばらくして私を手招きして呼び 「今日はね、お前にとって一生大切にしなければならないお守りを持ってきたんだよ。」 祖母は着物の袖口からその”お守りを”取り出して私の手を引き寄せ手のひらの上に載せた。 お守りは4cm×3cm、厚み2mmくらいの小さなもので紫紺の布で包まれており縫い込まれているため中身は取り出せない。
「このお守りの中身を出しちゃいけないよ。」 「お前の身に何か起きた時に身代わりになって助けてくれるものだからね。」

私はすぐ聞き返した! 「ばあちゃん、こんな小さなお守りがどうやって俺の身代わりになるのさ?」

祖母は笑いながら
「そんな時が来るかどうか分からないけどね。・・」 「来ないことが一番いいんだよ。・・」 「それでも、本当にそんな事が起きてしまったら、その時に分かるよ。」とニヤっと笑った。 「とにかく、絶対落とさないよう肌身離さずしまって置きなさい。」・・・・

その私と祖母のやり取りを見ていた母は、理解できていない私の様子をみて
「ばあちゃんはね、生き神様なんだよ!」・・・! と言った。
「はあ~!?・・・」 「生き神様?・・・何それ?」 「どう見たって、人間でしょ!」

母は意外にも真顔で 「人には突然神様からお告げがあって、神様の力を授かる人がいるのさ!」・・・

私は当然信じる訳が無く 「へえ~!、そんなのどうやって証明するのさ?・・・」
すると祖母が笑顔で 「じゃあ、証明してみせよっか!」 と言い、静かに語り始めた。
「神様の力は誰もが授かるっていう訳じゃないんだ。」 「ばあちゃんはね、16歳の誕生日の夜にお告げがあったのさ・・・・。」

つづく







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【 温泉宿の想い出 】 [都市伝説]

昭和〇〇年

日本は景気が上昇し始め、企業は活性し、社員ひとりひとりが活気に満ち溢れていた・・・・・

私は、そんな時代に中堅商社の営業マンとして、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍していた!
目標も達成しなかった月は無く、上司からも信頼されていた。

売れる時代と言うのは、誰もが売れるわけではない。当たり前の事ではあるが、売れる時代も売れない時代も販売の厳しさとは、どの企業も皆同じなのだ。

私は同僚からも後輩からも慕われていたように思う・・・・
プロジェクトも私が中心となりチーム一丸となって、次々と計画を成功させていった。

しかし・・・・・・・・・・・・ある出来事でチームは崩壊してしまった。


3月決算の当社は、1月時点で部署ごとの目標達成率、契約高見込みが推測できる。
その1月の会議が今期の見込み報告の最終会議となる。
つまりその会議での各部署の報告が1年間競ってきた結果発表であり、順位が確定される場なのだ!


私を中心として戦ってきたチームは、どん底から這い上がり昨年は惜しくも2位だった。
しかし、今期のメンバーは何かが違った。
期初からペンディングとなっていた案件は成約へと進み、次々と仕掛けた案件は成約していった。・・・


今期1月の会議、私は分かりきっている会議の席で取りを務める。 <みんなありがとう!念願の1位だ。>

会社からの褒章として、チームの打ち上げ費用の金一封目録が営業部長より渡された。・・・


季節が変わり5月。チーム全員での初めての褒章旅行。
私の右腕として今回の結果に大きく貢献した杉原(仮名)が自分から進んで幹事を務めてくれた。

バスの長旅でも全員疲れた様子もなく、東北の木造の鄙びた温泉宿に到着した。
宿泊部屋は1階と2階で宴会部屋は3階にある。
宴会場は30人で、ちょうど良いくらいの大きさの部屋で、我々20人の宴会には十分過ぎる広さだった。
到着した時にはもう辺りは真っ暗で宴会場も準備は整っていた。

温泉にも浸かり、しばらくして宴会は始まった・・・・。


仕事の緊張感から解放された宴会。全員が酒の酔いに呑まれていく ・・・・。

我々の両隣の宴会場も騒がしく、宴は深夜まで続いた・・・・。

部屋の窓側は障子が閉じていたが、障子の向こう側は通路になっているのか女中が慌ただしく各部屋の行き来をしている。・・・<賑やかだな・・・>

私も相当酒が回っていたせいか、いつの間にかその場で酔いつぶれてしまった。

朝 ・・・・。

女性は部屋に戻った様子で、宴会部屋には男ばかりが雑魚寝状態だった。
閉じている障子の向こうからの柔らかい日差しが眩しかった・・・・。

私はテーブルの気の抜けたビールを口に運んだ。 そして立ち上がり、

「おい!みんな朝だぞ!」 と掛け声を掛けた。

そして障子を開けた。 空気が爽やかだ!

酔って窓を閉めなかったせいか障子を開けると、目の前には見事な山間の静かな景色が広がっていた。
窓のすぐ下は渓谷になっており川が流れている・・・・・・・・。

「ん?」 目をこすってもう一度窓の下を見た・・・・・・・・!!!

「うっ・・・!」 声にならない驚きでその場にへたりこんだ!

昨日酔ってはいたが確かにこの障子の向こうは窓ではなく、女中たちが両隣の部屋の宴会場を慌ただしく行き来していたのだ!

しかし、そんな通路は無い・・・。

「どうしんたんですか?」  部下の一人が言った。

私は震えながら障子の向こうを指差して
「昨日ここは女中が行ったり来たりしてたよな?・・」 
そう言われた部下も障子の向こうの景色を見ながら・・・気付いた様子で絶句した・・・・・・。


あとで片づけに来た女中に聴いてみたが、酔ってたので勘違いしたのではないかと笑い飛ばされてしまった・・・・・。

<そんなはずはない。部屋にいた全員が記憶している。・・・>

この宴会の後、数日後、訳は分からないが全員が重い風邪の症状に襲われる。

そして、回復したがチームには活気は無かった。










【 暗闇からの脱出 】 [都市伝説]

昭和〇〇年

<ある夏の日。>

その小学校は夏休みに入っていた。・・・

夏休みとはいっても、日中はこの学校に通う近所の子供たちや、部活の子供たちでグランドはわりと賑やかだった。・・・

その噂は夏休みに入る以前からあり、教師の耳にも入っていた。

-「誰かのイタズラじゃないんですか?」- ・・・・・
-「たぶんイタズラでしょ、馬鹿馬鹿しい」-
-「でも同じ場所っていうのがねえ・・・不思議というか?、イタズラにしては地味ですよね~」-

<この小学校は古い校舎で、木造モルタルで建てられている。   校門を入ると、400mトラックがスッポリ入る大きなグランドがあり、その後ろに3階建ての校舎がある。   その校舎の後ろ、校舎から20mくらい離れた所に屋外のトイレと機材置場と物置小屋がある。   そして、そこに並んでペット小屋がありウサギを飼育していた。>

噂は” 校舎裏のトイレの窓が開いている" という特に不思議でもない普通に聞こえる話だ。・・・

通いの用務員は夜8時に全ての教室、校舎の設備を確認して帰るので、校舎裏のトイレの窓は必ず閉めて帰るという。
しかし、朝一番に来る用務員が校舎を見回ると、5つあるトイレの内、一番右端にあるトイレの換気用の窓が開いているというのだ。・・・

<そのトイレの窓は入口のドアの上に設置してある換気用の窓で、高さ15センチ、幅40センチの小さな窓で人が通れるものではない。またレバー式の密閉窓のため内側からしか開けられない。生徒が開けるには身長的に厳しいがドアをよじ登れば開けられないこともない。当時のトイレは和式であり定期的にバキュームカーが来てくみ取っていた。>

最初、用務員は生徒が朝早く登校して、ウサギの様子でもを見ているうちにトイレに行きたくなり使用し、換気のため窓を開けたのだと思っていた。
しかし、来る日も来る日も同じ窓が開いているので、用務員は不思議に思い生徒を探してみることにした。

鍵が掛かっている校舎には入れないだろうから、外の雲梯で遊んでいるのかと用務員は思っていた。
しかし、グランドや雲梯を見ても人影はなかったという。

用務員はもしかすると” 学校荒らし ” が下見に来ているのではないかという思いになり、もし生徒に何かあったらという不安から学校長に報告したのだった。・・・・・・・
それが噂の始まりだった。・・・・

学校長は夏休みに入る前に教師全員にそのことを伝え注意を促したのだった。
また駐在所にも見回りを強化するよう連絡した。・・・・・

しかし、学校荒らしどころか不信者の影すら現れない。
その不可思議な現象は、お決まりのオカルト現象として生徒達を盛り上げた!

その現象は夏休みに入ってからも続いていた。・・・
小さな換気用の窓だったため、教師たちは地盤の共鳴(どこかの工事現場の振動)じゃないかということで学校荒らしの線は頭から薄れていった。

そして夏休みが終わったある日、一人の若い教師が、その現象を確認するため生徒たちに、ひとつの提案を持ちかけたのだった。

-「今日はみんなに提案がある。」-

-「今週の土曜日に学校キャンプを実施する!」-    <生徒たちの歓声>
-「参加は自由!、但し、肝試しありー!」   <生徒たちの歓声とブーイング!>

-「先生な、土曜日当直なんだよ。でもな最近みんなも知ってると思うが、裏のトイレの窓の事・・・・ちょっと調べてみたいと思ってなっ!」-     
-「先生ー!、怖いんだろー!」-   <冷やかしの野次、歓声!>

土曜日18:00。
集まったのは若い教師と男子生徒3名、女子生徒3名の計7名。
用務員も若い教師から当直の際、肝試しを生徒達と実施したい旨の相談を受け、念のため参加することになっている。

" 肝試し "と言うこともあり、集合してから若い教師は、しばらくの間教室で知っている限りの怪談話で生徒たちを盛り上げていた。

時計は21:00・・・・・

ー「よし!、みんなー!そろそろいい時間だ! 心の準備はいいかー!」ー
ー「おー!」ー・・・<歓声が挙がった!>

肝試しを盛り上げるため、灯りは用務員の懐中電灯と若い教師のランプだけで見回りを始めた。・・・
若い教師が話した怪談の効果もあり、最初は勢いのあった生徒たちもかなり緊張している。
用務員が先頭に立ち、若い教師は一番後ろを歩いて行く。・・・

若い教師は学校荒らしの事が気になっていた。・・・
<万一学校荒らしだった場合、生徒に怪我でもさせた場合取り返しがつかない>・・・・。

ー「クソっ!」ー・・・<生徒を巻き込むべきではなかった。校長にも話さず迂闊だったことを若い教師は後悔していた。>

しかし、生徒たちの目は輝いていた!、初めての経験と恐怖心の狭間で、この時を楽しんでいるかのように。<恐怖心よりも冒険心が上回っていた>・・・・

一行はひとつひとつ教室を確認し進んだ。

音楽室のドアを開ける。用務員の懐中電灯に映し出された作曲家達の肖像画は不気味だった。・・・・・<何も無い。>

・・・・若い教師が音楽室を出てドアを閉めようとした時だった。・・・・・「ポン」!!

若い教師は目を大きくしてかすれた声で、ー「今、音鳴ったよな?」ーと生徒に語り掛けた。

生徒たちは驚いたように振り向き、首を横に振った。

一人の女子生徒が小声で・・ー「先生おどかさないでよー。何も聞こえてないよ。」ー

若い教師は自分の耳を疑ったが、言われてみれば確かに定かではない。
勘違いだったかもしれないと思い直し、気合いを入れ直した・・・・

一行は緊張感の中、各教室を確認して行く・・・・・。

そして三階の奥にある理科室まできた。<これで校舎の教室は最後>

用務員が静かにドアを開ける。
無気味な人体模型が見えている ・・・・・。

生徒達も恐る恐る入って行く。
後ろを付いて行く若い教師 ・・・・・。

・・・・「ん!」・・・<何か聞こえた気がした。>

何の音なのかは分からない。・・微かな音・・・生徒達には聞こえていないのかもしれない。・・・
<若い教師はこの教室に入ってから、自分が妙に緊張していることに気付いた。>

・・・・静寂
・・・・暗闇に懐中電灯とランプの灯りだけが不気味に揺らいでいる。
・・・・若い教師は右側の壁にある黒板の方へ近づいた。

音の原因が分かった。黒板消しが落ちていた。・・・・・・<これだな>

気を取り直して窓側に移動した。
もう用務員と生徒たちは教室を出ている。・・・・

窓からは問題のトイレが見えている。・・・・若い教師はランプを下し暗がりの中トイレを見下ろした。
目は暗がりでも慣れてきていたが、問題の開いているという窓までは暗くて確認できない。

しかし、何故なのか若い教師は見えない暗がりのトイレを集中せずにはいられなかった。<胸騒ぎがする>

しばらくの間、引き付けられるように見下ろしていたが、我に返って生徒たちの後を追った。・・・・

一行は理科室を出て校舎裏口の玄関まで来た。
裏玄関の中央には大きな白鳥の剥製が置いてある。

日中は優雅な姿の白鳥の剥製も肝試しとなると妙に不気味に見えてくる。
若い教師が白鳥の方にランプをかざす・・・白鳥の目が自分の方を見ているようだった。・・・

全員外に出た!・・・・・<ゆっくりと問題のトイレに近づいて行く。>


問題のトイレに到着し生徒たちの緊張感は限界に近づいていた・・・・

用務員は左側トイレからドアを開ける。・・・・<特に変わった様子はない。>

次々に調べていった。

生徒たちと若い教師はトイレの前から少し離れた所で立ちすくんでいる。・・・・
<若い教師は万一”学校荒らし”が潜んでいたらと警戒していた。>
そして問題の5番目のトイレに・・・・<換気用窓は開いている。>

用務員はドアを開けた。・・・・・<変わった様子はない。>


しかし、用務員は出てこない。・・・・・?


ドアが開いた!    「先生ー!、ちょっと来てください。」 と若い教師を手招いている。

若い教師はトイレに向かった。・・・<生徒たちは不安げに見守っていた。>

用務員は「先生これなんでしょう?」と言いトイレの中を指差した。

懐中電灯の光が便槽の奥を照らすが暗くてよく分からない。・・・

さらに用務員は「何か光ってますよね!」と言い、若い教師は目を細めて見た。

確かに何か光っている。・・・・・<何だろう?>

若い教師は用務員と入れ替わり、トイレの中を顔を近づけて覗き込んだ。

ランプをトイレの中に入れたいがランプの形状がトイレ穴より大きく無理なのだ。
懐中電灯を用務員から受け取り、顔とトイレ穴の隙間から照らしてみた。

<確かに何か黒いものが光っている気がした。・・何だろう?>

若い教師は外にいる生徒に機材置場の横にある焚火用の鉄の引っ掻き棒を持ってくるよう指示した!
生徒は言われる通り、持ってきて若い教師に手渡した。

若い教師はその引っ掻き棒でトイレの中を黒く光っていたあたりに突っ込み掻き混ぜている。
しばらくすると、何か感触があったのか掻き混ぜる手が止まった・・・

若い教師はゆっくりと引っ掻き棒を上に上げた。

「うわー!」その場でへたり込んでしまった。・・・

持ち上げられた引っ掻き棒には、便に塗れた黒い髪の毛と白骨化した頭蓋骨がぶら下がっている。
よく見ると頭蓋骨上部には斧が突き刺さっている。・・・・・


<このトイレには頭蓋骨だけではなく白骨化した体全体の人の骨が確認された。後に隣町の小学校で行方不明になっている小学4年生の遺体であることが判明した・・・・・ この遺体が発見されるまでの不可思議な現象は成仏出来ない死者の霊が、早くここから出たいという、または家に早く帰りたいという、魂の起こした悲痛な訴えだったのかもしれない。>











【 最後の晩餐は昨日のように 】 [都市伝説]

静かな夜・・・・・・・・

2DKの部屋で寝室のドアは開いている。・・・・

突然目が覚めた私は、暗闇の中、手探りで目覚まし時計のバックライトを点け時間を見た。・・・2時半?
<なぜにこんな時間に目が覚めるのだろう?疲れているはずなのに・・・>

・・・<今日は久々の休みだ・・・・寝よう・・・> ・・・・ 少し肌寒さを感じ毛布を首まで手繰り、目を閉じた・・・

静かに時間が流れる・・・・
眠りに入る寸前のような朦朧とした意識の中で・・・・・・・ふと気が付いた。・・・  ? <何か聞こえる・・・>

台所?・・・・ん?・・ゴミ箱に敷いているビニール袋を触る音?・・・・・何だろう?・・・微かに目を開けようとすると音は止んだ。・・・・・・<気のせいか・・>・・・・・。


その日、目を覚ました時には午前11時をまわっていた。
私は昨日のというより今日の夜明け前の暗がりの物音のことを思い出していた。・・・<夢かな>

起き上がり台所のところへ行き、ゴミ箱を見たが特に変わった様子はない。
<夢か。・・・>気のせいだな!

穏やかな午後だった。・・・

その日、なぜか母の作るジャガイモ料理が無性に食べたくなった私は、母に携帯メールで、夕食を一緒に食べることを伝え車を飛ばした。

母からは何を作っておけばいいか返信があり、 ”肉じゃが ”と伝えた。
<しばらく帰っていないな・・・たまには顔見せないとな・・・>

実家に着いた時には8時を過ぎていた。・・・辺りは真っ暗だった。
森の中の一軒家、祖父の遺産であるこの家は、二階建て12部屋もある洋館で母一人で住んでいる。
当然使用している部屋は3部屋程度なのだが全部屋の手入れは欠かせない。
私の部屋は二階の一番奥にある。
全室の掃除は年老いた母には無理がある。そのため1か月に1度は掃除婦の方が来て手入れをしていた。

久々に会う母は思ったより元気そうだった。
さほど会話もなく食事を済ませ、お風呂に入り、居間で二人でビールを飲んでいた。
何気ない昔話をして時間が経過した。しばらくすると母が眠いと言うので休むことにした。

「たまには顔見せなさいよ。」と母は言い寝室に向かって行った。・・・・
私は一階の廊下を二階への階段に向かった。一階の廊下を通ると左の壁には全身鏡が掛けられている。立ち止まり、そこに映し出されている自分の姿を見た。・・・<顔が相当疲れている。・・・明日も休暇を取ろう>

二階の自分の部屋に入り、そのまま床に就いた。・・・・


・・・・・ ・・・・・ ?ん・・・?
まてっ! <1階に鏡なんかあっただろうか!?>

いや無い!・・・・・でももしかすると母が新しく買ったのかもしれない。
・・・<きっとそうだ、明日訊いてみよう>
そう自分に言い聞かせながら床に就いた。・・・・実家にいるという安心感なのか疲れているのか深い眠気が襲う。・・・

翌朝。寝ぼけながら私は一階に下りて行きキッチンのドアを開けた。

そこには朝食が準備されていた。<自分の好きなものばかりだった・・・ありがとうおふくろ。>
母の気配が無いので外に出ているのだと思い食事を摂ることにした。・・・・・・!そうだ思い出した。昨日の鏡!・・・・・・・慌ててキッチンを出て鏡のあった廊下に向かった。

!!!「無い!」
固唾を呑んだ!。 私は母を呼んだ!・・叫んだ「おふくろー!」

部屋を探した。・・・<いない> ・・・・部屋は全室綺麗に手入れされている。
そしてトイレ、浴槽と探したが母親の姿は無い。・・・

外に出た。・・・・雨が降っている。・・・<どこに行ったんだろう?>
あたりを見回したが確認できない。・・・・空が光った!・・雷光だ。
空は雷雲でみるみる暗くなってゆく・・・・・・・・・・・夜のようだった。・・・・

土砂降りの雨の中、裏手の納屋まで走って行き扉を開けた。・・・・

母はいた!・・・・


(母は腐敗した哀れな姿で息を引き取っていました。昔私がプレゼントしたキーホルダーを握りしめ・・後で分かったことですが心筋梗塞でした。  でも2週間も前に亡くなっていたのです。 今思うとなぜメールに返信が来たのか、なぜあの日一緒に食事が出来たのか、なぜ朝食が用意されていたのか考えると不思議なことばかりです。でもなぜか私の心は穏やかです。多分あの出来事は母の私への最後の心遣いだったのかもしれません。・・・) 


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