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【 温泉宿の想い出 】 [都市伝説]

昭和〇〇年

日本は景気が上昇し始め、企業は活性し、社員ひとりひとりが活気に満ち溢れていた・・・・・

私は、そんな時代に中堅商社の営業マンとして、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍していた!
目標も達成しなかった月は無く、上司からも信頼されていた。

売れる時代と言うのは、誰もが売れるわけではない。当たり前の事ではあるが、売れる時代も売れない時代も販売の厳しさとは、どの企業も皆同じなのだ。

私は同僚からも後輩からも慕われていたように思う・・・・
プロジェクトも私が中心となりチーム一丸となって、次々と計画を成功させていった。

しかし・・・・・・・・・・・・ある出来事でチームは崩壊してしまった。


3月決算の当社は、1月時点で部署ごとの目標達成率、契約高見込みが推測できる。
その1月の会議が今期の見込み報告の最終会議となる。
つまりその会議での各部署の報告が1年間競ってきた結果発表であり、順位が確定される場なのだ!


私を中心として戦ってきたチームは、どん底から這い上がり昨年は惜しくも2位だった。
しかし、今期のメンバーは何かが違った。
期初からペンディングとなっていた案件は成約へと進み、次々と仕掛けた案件は成約していった。・・・


今期1月の会議、私は分かりきっている会議の席で取りを務める。 <みんなありがとう!念願の1位だ。>

会社からの褒章として、チームの打ち上げ費用の金一封目録が営業部長より渡された。・・・


季節が変わり5月。チーム全員での初めての褒章旅行。
私の右腕として今回の結果に大きく貢献した杉原(仮名)が自分から進んで幹事を務めてくれた。

バスの長旅でも全員疲れた様子もなく、東北の木造の鄙びた温泉宿に到着した。
宿泊部屋は1階と2階で宴会部屋は3階にある。
宴会場は30人で、ちょうど良いくらいの大きさの部屋で、我々20人の宴会には十分過ぎる広さだった。
到着した時にはもう辺りは真っ暗で宴会場も準備は整っていた。

温泉にも浸かり、しばらくして宴会は始まった・・・・。


仕事の緊張感から解放された宴会。全員が酒の酔いに呑まれていく ・・・・。

我々の両隣の宴会場も騒がしく、宴は深夜まで続いた・・・・。

部屋の窓側は障子が閉じていたが、障子の向こう側は通路になっているのか女中が慌ただしく各部屋の行き来をしている。・・・<賑やかだな・・・>

私も相当酒が回っていたせいか、いつの間にかその場で酔いつぶれてしまった。

朝 ・・・・。

女性は部屋に戻った様子で、宴会部屋には男ばかりが雑魚寝状態だった。
閉じている障子の向こうからの柔らかい日差しが眩しかった・・・・。

私はテーブルの気の抜けたビールを口に運んだ。 そして立ち上がり、

「おい!みんな朝だぞ!」 と掛け声を掛けた。

そして障子を開けた。 空気が爽やかだ!

酔って窓を閉めなかったせいか障子を開けると、目の前には見事な山間の静かな景色が広がっていた。
窓のすぐ下は渓谷になっており川が流れている・・・・・・・・。

「ん?」 目をこすってもう一度窓の下を見た・・・・・・・・!!!

「うっ・・・!」 声にならない驚きでその場にへたりこんだ!

昨日酔ってはいたが確かにこの障子の向こうは窓ではなく、女中たちが両隣の部屋の宴会場を慌ただしく行き来していたのだ!

しかし、そんな通路は無い・・・。

「どうしんたんですか?」  部下の一人が言った。

私は震えながら障子の向こうを指差して
「昨日ここは女中が行ったり来たりしてたよな?・・」 
そう言われた部下も障子の向こうの景色を見ながら・・・気付いた様子で絶句した・・・・・・。


あとで片づけに来た女中に聴いてみたが、酔ってたので勘違いしたのではないかと笑い飛ばされてしまった・・・・・。

<そんなはずはない。部屋にいた全員が記憶している。・・・>

この宴会の後、数日後、訳は分からないが全員が重い風邪の症状に襲われる。

そして、回復したがチームには活気は無かった。










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