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【 暗闇からの脱出 】 [都市伝説]

昭和〇〇年

<ある夏の日。>

その小学校は夏休みに入っていた。・・・

夏休みとはいっても、日中はこの学校に通う近所の子供たちや、部活の子供たちでグランドはわりと賑やかだった。・・・

その噂は夏休みに入る以前からあり、教師の耳にも入っていた。

-「誰かのイタズラじゃないんですか?」- ・・・・・
-「たぶんイタズラでしょ、馬鹿馬鹿しい」-
-「でも同じ場所っていうのがねえ・・・不思議というか?、イタズラにしては地味ですよね~」-

<この小学校は古い校舎で、木造モルタルで建てられている。   校門を入ると、400mトラックがスッポリ入る大きなグランドがあり、その後ろに3階建ての校舎がある。   その校舎の後ろ、校舎から20mくらい離れた所に屋外のトイレと機材置場と物置小屋がある。   そして、そこに並んでペット小屋がありウサギを飼育していた。>

噂は” 校舎裏のトイレの窓が開いている" という特に不思議でもない普通に聞こえる話だ。・・・

通いの用務員は夜8時に全ての教室、校舎の設備を確認して帰るので、校舎裏のトイレの窓は必ず閉めて帰るという。
しかし、朝一番に来る用務員が校舎を見回ると、5つあるトイレの内、一番右端にあるトイレの換気用の窓が開いているというのだ。・・・

<そのトイレの窓は入口のドアの上に設置してある換気用の窓で、高さ15センチ、幅40センチの小さな窓で人が通れるものではない。またレバー式の密閉窓のため内側からしか開けられない。生徒が開けるには身長的に厳しいがドアをよじ登れば開けられないこともない。当時のトイレは和式であり定期的にバキュームカーが来てくみ取っていた。>

最初、用務員は生徒が朝早く登校して、ウサギの様子でもを見ているうちにトイレに行きたくなり使用し、換気のため窓を開けたのだと思っていた。
しかし、来る日も来る日も同じ窓が開いているので、用務員は不思議に思い生徒を探してみることにした。

鍵が掛かっている校舎には入れないだろうから、外の雲梯で遊んでいるのかと用務員は思っていた。
しかし、グランドや雲梯を見ても人影はなかったという。

用務員はもしかすると” 学校荒らし ” が下見に来ているのではないかという思いになり、もし生徒に何かあったらという不安から学校長に報告したのだった。・・・・・・・
それが噂の始まりだった。・・・・

学校長は夏休みに入る前に教師全員にそのことを伝え注意を促したのだった。
また駐在所にも見回りを強化するよう連絡した。・・・・・

しかし、学校荒らしどころか不信者の影すら現れない。
その不可思議な現象は、お決まりのオカルト現象として生徒達を盛り上げた!

その現象は夏休みに入ってからも続いていた。・・・
小さな換気用の窓だったため、教師たちは地盤の共鳴(どこかの工事現場の振動)じゃないかということで学校荒らしの線は頭から薄れていった。

そして夏休みが終わったある日、一人の若い教師が、その現象を確認するため生徒たちに、ひとつの提案を持ちかけたのだった。

-「今日はみんなに提案がある。」-

-「今週の土曜日に学校キャンプを実施する!」-    <生徒たちの歓声>
-「参加は自由!、但し、肝試しありー!」   <生徒たちの歓声とブーイング!>

-「先生な、土曜日当直なんだよ。でもな最近みんなも知ってると思うが、裏のトイレの窓の事・・・・ちょっと調べてみたいと思ってなっ!」-     
-「先生ー!、怖いんだろー!」-   <冷やかしの野次、歓声!>

土曜日18:00。
集まったのは若い教師と男子生徒3名、女子生徒3名の計7名。
用務員も若い教師から当直の際、肝試しを生徒達と実施したい旨の相談を受け、念のため参加することになっている。

" 肝試し "と言うこともあり、集合してから若い教師は、しばらくの間教室で知っている限りの怪談話で生徒たちを盛り上げていた。

時計は21:00・・・・・

ー「よし!、みんなー!そろそろいい時間だ! 心の準備はいいかー!」ー
ー「おー!」ー・・・<歓声が挙がった!>

肝試しを盛り上げるため、灯りは用務員の懐中電灯と若い教師のランプだけで見回りを始めた。・・・
若い教師が話した怪談の効果もあり、最初は勢いのあった生徒たちもかなり緊張している。
用務員が先頭に立ち、若い教師は一番後ろを歩いて行く。・・・

若い教師は学校荒らしの事が気になっていた。・・・
<万一学校荒らしだった場合、生徒に怪我でもさせた場合取り返しがつかない>・・・・。

ー「クソっ!」ー・・・<生徒を巻き込むべきではなかった。校長にも話さず迂闊だったことを若い教師は後悔していた。>

しかし、生徒たちの目は輝いていた!、初めての経験と恐怖心の狭間で、この時を楽しんでいるかのように。<恐怖心よりも冒険心が上回っていた>・・・・

一行はひとつひとつ教室を確認し進んだ。

音楽室のドアを開ける。用務員の懐中電灯に映し出された作曲家達の肖像画は不気味だった。・・・・・<何も無い。>

・・・・若い教師が音楽室を出てドアを閉めようとした時だった。・・・・・「ポン」!!

若い教師は目を大きくしてかすれた声で、ー「今、音鳴ったよな?」ーと生徒に語り掛けた。

生徒たちは驚いたように振り向き、首を横に振った。

一人の女子生徒が小声で・・ー「先生おどかさないでよー。何も聞こえてないよ。」ー

若い教師は自分の耳を疑ったが、言われてみれば確かに定かではない。
勘違いだったかもしれないと思い直し、気合いを入れ直した・・・・

一行は緊張感の中、各教室を確認して行く・・・・・。

そして三階の奥にある理科室まできた。<これで校舎の教室は最後>

用務員が静かにドアを開ける。
無気味な人体模型が見えている ・・・・・。

生徒達も恐る恐る入って行く。
後ろを付いて行く若い教師 ・・・・・。

・・・・「ん!」・・・<何か聞こえた気がした。>

何の音なのかは分からない。・・微かな音・・・生徒達には聞こえていないのかもしれない。・・・
<若い教師はこの教室に入ってから、自分が妙に緊張していることに気付いた。>

・・・・静寂
・・・・暗闇に懐中電灯とランプの灯りだけが不気味に揺らいでいる。
・・・・若い教師は右側の壁にある黒板の方へ近づいた。

音の原因が分かった。黒板消しが落ちていた。・・・・・・<これだな>

気を取り直して窓側に移動した。
もう用務員と生徒たちは教室を出ている。・・・・

窓からは問題のトイレが見えている。・・・・若い教師はランプを下し暗がりの中トイレを見下ろした。
目は暗がりでも慣れてきていたが、問題の開いているという窓までは暗くて確認できない。

しかし、何故なのか若い教師は見えない暗がりのトイレを集中せずにはいられなかった。<胸騒ぎがする>

しばらくの間、引き付けられるように見下ろしていたが、我に返って生徒たちの後を追った。・・・・

一行は理科室を出て校舎裏口の玄関まで来た。
裏玄関の中央には大きな白鳥の剥製が置いてある。

日中は優雅な姿の白鳥の剥製も肝試しとなると妙に不気味に見えてくる。
若い教師が白鳥の方にランプをかざす・・・白鳥の目が自分の方を見ているようだった。・・・

全員外に出た!・・・・・<ゆっくりと問題のトイレに近づいて行く。>


問題のトイレに到着し生徒たちの緊張感は限界に近づいていた・・・・

用務員は左側トイレからドアを開ける。・・・・<特に変わった様子はない。>

次々に調べていった。

生徒たちと若い教師はトイレの前から少し離れた所で立ちすくんでいる。・・・・
<若い教師は万一”学校荒らし”が潜んでいたらと警戒していた。>
そして問題の5番目のトイレに・・・・<換気用窓は開いている。>

用務員はドアを開けた。・・・・・<変わった様子はない。>


しかし、用務員は出てこない。・・・・・?


ドアが開いた!    「先生ー!、ちょっと来てください。」 と若い教師を手招いている。

若い教師はトイレに向かった。・・・<生徒たちは不安げに見守っていた。>

用務員は「先生これなんでしょう?」と言いトイレの中を指差した。

懐中電灯の光が便槽の奥を照らすが暗くてよく分からない。・・・

さらに用務員は「何か光ってますよね!」と言い、若い教師は目を細めて見た。

確かに何か光っている。・・・・・<何だろう?>

若い教師は用務員と入れ替わり、トイレの中を顔を近づけて覗き込んだ。

ランプをトイレの中に入れたいがランプの形状がトイレ穴より大きく無理なのだ。
懐中電灯を用務員から受け取り、顔とトイレ穴の隙間から照らしてみた。

<確かに何か黒いものが光っている気がした。・・何だろう?>

若い教師は外にいる生徒に機材置場の横にある焚火用の鉄の引っ掻き棒を持ってくるよう指示した!
生徒は言われる通り、持ってきて若い教師に手渡した。

若い教師はその引っ掻き棒でトイレの中を黒く光っていたあたりに突っ込み掻き混ぜている。
しばらくすると、何か感触があったのか掻き混ぜる手が止まった・・・

若い教師はゆっくりと引っ掻き棒を上に上げた。

「うわー!」その場でへたり込んでしまった。・・・

持ち上げられた引っ掻き棒には、便に塗れた黒い髪の毛と白骨化した頭蓋骨がぶら下がっている。
よく見ると頭蓋骨上部には斧が突き刺さっている。・・・・・


<このトイレには頭蓋骨だけではなく白骨化した体全体の人の骨が確認された。後に隣町の小学校で行方不明になっている小学4年生の遺体であることが判明した・・・・・ この遺体が発見されるまでの不可思議な現象は成仏出来ない死者の霊が、早くここから出たいという、または家に早く帰りたいという、魂の起こした悲痛な訴えだったのかもしれない。>











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