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【 最後の晩餐は昨日のように 】 [都市伝説]

静かな夜・・・・・・・・

2DKの部屋で寝室のドアは開いている。・・・・

突然目が覚めた私は、暗闇の中、手探りで目覚まし時計のバックライトを点け時間を見た。・・・2時半?
<なぜにこんな時間に目が覚めるのだろう?疲れているはずなのに・・・>

・・・<今日は久々の休みだ・・・・寝よう・・・> ・・・・ 少し肌寒さを感じ毛布を首まで手繰り、目を閉じた・・・

静かに時間が流れる・・・・
眠りに入る寸前のような朦朧とした意識の中で・・・・・・・ふと気が付いた。・・・  ? <何か聞こえる・・・>

台所?・・・・ん?・・ゴミ箱に敷いているビニール袋を触る音?・・・・・何だろう?・・・微かに目を開けようとすると音は止んだ。・・・・・・<気のせいか・・>・・・・・。


その日、目を覚ました時には午前11時をまわっていた。
私は昨日のというより今日の夜明け前の暗がりの物音のことを思い出していた。・・・<夢かな>

起き上がり台所のところへ行き、ゴミ箱を見たが特に変わった様子はない。
<夢か。・・・>気のせいだな!

穏やかな午後だった。・・・

その日、なぜか母の作るジャガイモ料理が無性に食べたくなった私は、母に携帯メールで、夕食を一緒に食べることを伝え車を飛ばした。

母からは何を作っておけばいいか返信があり、 ”肉じゃが ”と伝えた。
<しばらく帰っていないな・・・たまには顔見せないとな・・・>

実家に着いた時には8時を過ぎていた。・・・辺りは真っ暗だった。
森の中の一軒家、祖父の遺産であるこの家は、二階建て12部屋もある洋館で母一人で住んでいる。
当然使用している部屋は3部屋程度なのだが全部屋の手入れは欠かせない。
私の部屋は二階の一番奥にある。
全室の掃除は年老いた母には無理がある。そのため1か月に1度は掃除婦の方が来て手入れをしていた。

久々に会う母は思ったより元気そうだった。
さほど会話もなく食事を済ませ、お風呂に入り、居間で二人でビールを飲んでいた。
何気ない昔話をして時間が経過した。しばらくすると母が眠いと言うので休むことにした。

「たまには顔見せなさいよ。」と母は言い寝室に向かって行った。・・・・
私は一階の廊下を二階への階段に向かった。一階の廊下を通ると左の壁には全身鏡が掛けられている。立ち止まり、そこに映し出されている自分の姿を見た。・・・<顔が相当疲れている。・・・明日も休暇を取ろう>

二階の自分の部屋に入り、そのまま床に就いた。・・・・


・・・・・ ・・・・・ ?ん・・・?
まてっ! <1階に鏡なんかあっただろうか!?>

いや無い!・・・・・でももしかすると母が新しく買ったのかもしれない。
・・・<きっとそうだ、明日訊いてみよう>
そう自分に言い聞かせながら床に就いた。・・・・実家にいるという安心感なのか疲れているのか深い眠気が襲う。・・・

翌朝。寝ぼけながら私は一階に下りて行きキッチンのドアを開けた。

そこには朝食が準備されていた。<自分の好きなものばかりだった・・・ありがとうおふくろ。>
母の気配が無いので外に出ているのだと思い食事を摂ることにした。・・・・・・!そうだ思い出した。昨日の鏡!・・・・・・・慌ててキッチンを出て鏡のあった廊下に向かった。

!!!「無い!」
固唾を呑んだ!。 私は母を呼んだ!・・叫んだ「おふくろー!」

部屋を探した。・・・<いない> ・・・・部屋は全室綺麗に手入れされている。
そしてトイレ、浴槽と探したが母親の姿は無い。・・・

外に出た。・・・・雨が降っている。・・・<どこに行ったんだろう?>
あたりを見回したが確認できない。・・・・空が光った!・・雷光だ。
空は雷雲でみるみる暗くなってゆく・・・・・・・・・・・夜のようだった。・・・・

土砂降りの雨の中、裏手の納屋まで走って行き扉を開けた。・・・・

母はいた!・・・・


(母は腐敗した哀れな姿で息を引き取っていました。昔私がプレゼントしたキーホルダーを握りしめ・・後で分かったことですが心筋梗塞でした。  でも2週間も前に亡くなっていたのです。 今思うとなぜメールに返信が来たのか、なぜあの日一緒に食事が出来たのか、なぜ朝食が用意されていたのか考えると不思議なことばかりです。でもなぜか私の心は穏やかです。多分あの出来事は母の私への最後の心遣いだったのかもしれません。・・・) 


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